2010年3月24日
天地明察
友情・努力・勝利。……どこぞの少年漫画誌のキャッチフレーズですが、話の作りはまんまこの構成。このテンプレート、熱くて泣ける話をつくるのには最適解なんでしょうね。
ラノベ畑出身の作者が時代小説書いたら賞まで取っちゃいましたというこの作品。もともと計算された伏線の扱いが上手い作者ですが、今作ではそれにさらに磨きがかかってる感じ。自分が何を書きたくて、何が書けて、誰に向けて書くのかがはっきり解っていて、ある意味ラノベの対極の存在と言っても良いのかなと。構成と文章がホント上手い。読み終わってから登場人物について軽く調べてみたけど、史実と矛盾とまでは行かない程度にフィクションとして上手くまとめ上げてるという印象。
ラノベ作者らしいところも残っていて、台詞で説明するところが多いんだよね。どんな人物なのか、最初のワンエピソード内の台詞でつかめる。ほんと上手いと思った。これが時代小説だと史実のエピソードを紹介する形になっていることが多いのと対照的。時代小説そんなに読んでる訳でもないんで主に隆慶一郎との対比でですけど。
すごく読みやすいんで、ラノベ卒業したい年頃の高校生あたりに読んでもらいたいなあ。メインテーマが数学なんだけど、小難しいところはばっさり切り落としてあるんで、知識無くても大丈夫。それでいて三平方の定理だけ知っていれば、作中の重要な問題を理解できるという親切設計。数学なんて何の役に立つんだという疑問への答えになるかもしれない。ヒカルの碁を読んでるとニヤリと出来るエピソードもあるしね。
でもってこれ、ドラマとか映画の原作としてかなり適してるんじゃなかろうか。絵になるシーンや名台詞が多い。まあ今の邦画業界考えると黒歴史になる可能性も高いけど。良い俳優を引き当てれたら面白い作品になりそうだ。
文庫落ちは当分先だろうけど、今買って損無し。この作者の作品では唯一万人受けするんじゃないかな。
